テキスタイルプリントの主要手法を解説!「シルクスクリーンプリント」と「インクジェットプリント」

テキスタイル業界における「シルクスクリーンプリント」と「インクジェットプリント」は、どちらも生地にデザインを施すための主要な印刷方法ですが、その仕組み、特徴、得意なこと、苦手なことが大きく異なります。

1. シルクスクリーンプリント:伝統と耐久性の王道

シルクスクリーンプリントとは?

シルクスクリーンプリントは、メッシュ状の版(スクリーン)にデザインの形に合わせた穴を開け、そこからインクを押し出して印刷する、孔版印刷の一種です。色ごとに版を作成するため、多色刷りの場合は色の数だけ版が必要になります。Tシャツプリントなどで最も一般的に使われている方法です。

仕組みを簡単に解説!

  1. 版を作る: デザインを露光した特別な乳剤をスクリーンに塗布し、デザイン部分だけがインクを通す穴になります。
  2. インクを乗せる: 作った版を生地にセットし、上から均一にインクを押し出します。
  3. 乾燥・定着: 穴を通ったインクが生地に転写され、乾燥させることでしっかり定着します。

写真はイメージです

メリット
  • 耐久性が高い: インクの層が厚く、洗濯や摩擦に強いです。
  • 鮮やかな色再現: インクを調色して特色も正確に再現できます。特に、DICやPantoneなどの特色指定(ブランドカラーなど)にも対応しやすいです。
  • 特殊インクもOK: 発泡インクでぷっくりさせたり、蓄光インクで光らせたり、ラメでキラキラさせたりと、表現の幅が広がります。
  • 大量生産に適している: 一度版を作れば、たくさん刷るほど一枚あたりのコストが下がります。
デメリット
  • 初期費用がかかる: 色の数だけ版を作る必要があるので、版代が発生します。小ロット生産だと割高になる傾向があります。
  • 複雑なデザインは苦手: 細かいグラデーションや写真のような精密な表現は得意ではありません。
  • 多色印刷は時間と手間がかかる: 色数が増えるほど版の枚数が増え、印刷工程も増えるため、納期やコストに影響します。

シルクスクリーンプリントはこんな時におすすめ!

  • ロゴや文字が中心のシンプルなデザイン
  • 単色または少数の色で構成されたデザイン
  • 耐久性が求められる製品(Tシャツ、ユニフォーム、作業着、バッグなど)
  • 大量生産を前提とした製品

2. インクジェットプリント:自由な表現を叶える次世代プリント

インクジェットプリントとは?

インクジェットプリントは、家庭用のプリンターと同じように、デジタルデータをもとにインクを生地に直接吹き付けて印刷するデジタル捺染の手法です。版を作る必要がないため、手軽に利用できます。

仕組みを簡単に解説!

  1. 前処理: 柄のにじみ防止や発色を良くする前処理剤を塗布して生地を整えます。
  2. データを用意: 印刷したいデザインをデジタルデータ(JPEGやPNGなど)で準備します。
  3. 直接プリント: 専用のインクジェットプリンターが、インクの微細な粒を直接生地に吹き付けます。
  4. 後処理: 染料インクを使用する場合は、染料を定着させるための蒸し工程や水洗工程が必要な場合があります。(顔料インクの場合は不要なこともあります)

写真はイメージです

メリット
  • 製版不要: 版を作成しないため、初期費用を抑えられます。
  • 小ロット・多品種生産に最適: 1枚からでも低コストで、スピーディーに印刷できます。デザインの修正もデータ上で簡単に行えます。
  • デザインの自由度が高い: フルカラー印刷が可能で、写真、イラスト、複雑なグラデーション、ぼかしなども美しく再現できます。
  • 柔らかな風合い: インクが生地に染み込むように定着するため、プリント部分がゴワつきにくく、生地の風合いを損ないません。
  • 環境負荷の軽減: 製版工程がないため、版洗浄に必要な水や糊剤の使用量が少なく、環境負荷が低いとされています。
デメリット
  • 耐久性: シルクスクリーンに比べてインク層が薄いため、洗濯や摩擦による色落ち・色移りがわずかに発生する可能性があります。(技術の進歩で改善傾向にあります)
  • インクの種類: 金、銀、ラメ、蛍光色といった特殊なインクの表現は難しい場合があります。
  • 生産コスト: 大量生産の場合、シルクスクリーンに比べて一枚あたりのコストが高くなる傾向があります。
  • 素材の制限: 染料インクを使用する場合、ポリエステルなどの特定の素材に適していることがあります。

インクジェットプリントはこんな時におすすめ!

  • 写真やグラデーションを含む複雑なデザイン
  • 多色使いのデザイン
  • 小ロット、多品種の生産(アパレル製品の試作、オンデマンド生産など)
  • 短納期で制作したい場合
  • 生地の風合いを重視する製品

結局、どちらを選べばいいの?

デザイン、作りたい枚数、予算、納期、そしてプリント後の風合いの好みによって最適な方法は変わってきます。

迷った時は、ぜひ制作を依頼する業者さんに相談してみてください。あなたのイメージにぴったりのプリント方法を一緒に見つけてくれるはずです!

特徴シルクスクリーンプリントインクジェットプリント
製版必要(色数分)不要(デジタルデータから直接印刷)
初期コスト高め(版代が発生)低め(版代不要)
ロット大量生産向き(単価が下がる)小ロット・多品種向き(1枚から手軽に)
デザインシンプルなロゴ、文字、単色・少色が得意。グラデーションは苦手。写真、グラデーション、細密なデザイン、フルカラーが得意。
耐久性高い(インク層が厚い)シルクスクリーンに比べてやや劣る可能性あり(技術向上中)
風合いインクの厚みがあり、しっかりとした質感生地になじむ柔らかな仕上がり
対応素材幅広い素材に対応。曲面も可。主にテキスタイル(綿、ポリエステルなど)。
特殊インク使用可能(発泡、蓄光、ラメなど)難しい場合が多い(CMYKが基本)
環境負荷版の作成や洗浄で水や糊剤を使用版が不要で水や糊剤の使用量が少ない

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