織物設計と糸の種類

織物は、縦方向の糸である経糸(たていと)と、横方向の糸である緯糸(よこいと)を組み合わせて作られます。この組み合わせ方を織物組織と呼びます。

織物組織の基本

織物組織の基本となるのは、三原組織と呼ばれる以下の3種類です。

  • 平織/タフタ
    経糸と緯糸が1本ずつ交互に交差する、最もシンプルな組織です。丈夫で摩擦に強く、裏表がないのが特徴です。
  • 綾織/斜紋織/ツイル
    経糸と緯糸が3本以上で構成され、斜めのうね(綾線)が現れます。平織より厚みがあり、やわらかく、シワになりにくいのが特徴です。デニムなどが代表的です。
  • 朱子織/サテン
    経糸または緯糸が長く表面に浮き、光沢感があるのが特徴です。なめらかな手触りでドレープ性も豊かです。ネクタイ生地などに使われます。

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組織図:

経糸(黒)、緯糸(白)で表示します

変化組織と特別組織

三原組織をベースに、さらに複雑な組み合わせや糸の配置で変化をつけた織り方です。

変化平織

平織の応用で、畝や凹凸、透かしなどを表現します。

  • 畝織うねおり: 拡大法や配列法を用いて作られ、経畝織たてうねおり緯畝織よこうねおりがあります。
    • 拡大法: 基本となる組織図を単純に大きくする方法です。
    • 配列法: 複数の組織を組み合わせて、新しい組織を作る方法です。
  • 変化畝織へんかうねおり: 畝の大きさが一定ではなく、不規則な畝を表現します。
  • 斜子織ななこおり: 経糸、緯糸ともに2本以上を引き揃えて平織のように組織したものです。
  • 正則斜子せいそくななこ: 経糸、緯糸を同数ずつ浮き沈みさせたもの。
  • 不規則斜子ふきそくななこ: 平織と斜子、または大小の斜子を組み合わせて作られます。
  • 変化斜子へんかななこ: 畝織や斜子織を様々に混合・変化させたり、組織点を増減させて作ります。
  • 向斜子織むかいななこおり: 経畝織と緯畝織を向かい合わせに配置したものです。

組織図例:

変化斜紋織

斜紋織の応用で、斜紋線の角度や連続性を変えたり、複数の斜紋を組み合わせたりします。

  • 正則斜紋織せいそくしゃもんおり: 経緯糸の密度が等しい場合、45度の斜紋線が現れます。
  • 急斜紋織きゅうしゃもんおり: 経緯糸の密度が等しい場合、45度以上の斜紋線が現れます。
  • 緩斜紋織かんしゃもんおり: 経緯糸の密度が等しい場合、45度以下の斜紋線が現れます。
  • 曲斜紋織きょくしゃもんおり: 正則斜紋や急斜紋を適当に混合し、湾曲した斜紋を表現します。
  • 破斜紋織はじゃもんおり: 斜紋織の経糸または緯糸の配列順序を変え、斜紋線を不連続にしたものです。
  • 飛び斜紋織とびしゃもんおり: 斜紋線の方向を変えずに、一定の間隔を置いて中断させたものです。
  • 山形斜紋織やまがたしゃもんおり: 斜紋線の方向を連続的に変え、山形にしたものです(ヘリンボーン柄など)。
  • 組斜紋織くみしゃもんおり: 正則斜紋を網代あじろ形に組み合わせたものです。網代とは、木や竹などの植物を、細く薄く加工した物を材料として縦横交互に編んだ物です。
  • 重斜紋織じゅうしゃもんおり: 方向の異なる2つの斜紋を重ね、一方の斜紋線のみを連続させたものです。
  • 撚斜紋織ねんじゃもんおり: 畝織のような畝を斜紋線のように斜めに走らせたものです。
  • 昼夜斜紋織ちゅうやしゃもんおり: 市松状に片面斜紋の表裏を組み合わせて、両面で表情が異なるようにしたものです。
  • 飾斜紋織かざりしゃもんおり: 正則斜紋を基本とし、これに様々な組織点を追加して模様を表現したものです。
  • ぼかし斜紋織: 斜文織を組み合わせて、経糸、緯糸の浮き方によって織物にぼかし柄を表現したものです。

組織図例:

変化朱子織

朱子織の応用で、光沢感や柄を変化させます。

  • 変則朱子織へんそくしゅすおり:一定の飛び数はありませんが、組織点をまばらに配置して朱子のような外観を与えたものです。
  • 拡朱子織かくしゅすおり: 正則朱子を拡大し、経糸または緯糸の浮き方を多くしたものです。
  • 重ね朱子織かさねしゅすおり: 朱子の組織点の周囲に1つずつ組織点を追加したものです。
  • 花崗織みかげおり: 朱子の組織点の周囲に2つ以上の組織点を追加したり、さらに位置を転換させたりして作られます。
  • 昼夜朱子織ちゅうやしゅすおり: 昼夜斜紋織と同様に、朱子の表と裏を市松形に組み合わせたものです。
  • ぼかし朱子織: 朱子織を基本とし、組織の濃淡でぼかし柄を表現したものです。

組織図例:

特別組織(特殊な織り方)

特定の機能や見た目を実現するための特殊な織り方です。

  • 蜂巣織はちすおり: 表面に蜂の巣のような四角形の凹凸が現れます。
  • 摸紗織もしゃおり: 経糸と緯糸の間に透き間を作り、紗織しゃおり絽織ろおりのような外観にします。紗織も絽織も、経糸を左右に交差させる「からみ織り」の一種です。
    • 紗織しゃおり: 経糸を左右1回ずつ交差させる織り方です。
    • 絽織ろおり: 経糸を交差させた状態で緯糸を3回以上打ち込んだ後、左右の経糸を逆に交差させる織り方です。
  • 浮き織うきおり: 模様の部分の糸を地組織から浮かせて、立体的な模様を作ります。
  • 梨地織なしじおり: 経糸と緯糸を不規則に交差させ、梨の皮のようなざらざらとした表面を表現します。

組織図例:

重ね組織(多重構造)

経糸や緯糸に複数の種類の糸を用いることで、厚みや強度、両面の色柄などを変えることができる織り方です。

  • 片重ね組織
  • 二重組織
  • 多層組織
緯二重織の例


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組織図:

経二重織の例

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組織図:

経緯二重織の例

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組織図:

糸の種類と単位

織物に使われる糸には様々な種類があり、その太さを表す単位も複数あります。

糸の単位

  • 番手ばんて: 紡績糸(短い繊維を撚り合わせた糸)の太さを表す単位です。綿、毛、麻などに用いられ、数値が大きいほど糸は細くなります。これは、一定の重さに対する糸の長さで表す恒重式うじゅうしきのためです。
    • 綿番手: 453.6g(1ポンド)の糸の長さが約840ヤード(768.1m)であれば「1番手」となります。
    • 毛番手: 1,000gの糸の長さが1,000mある場合に「1番手」となります。
  • デニール(d): フィラメント糸(絹や化学繊維など、1本の長い繊維でできた糸)の太さを表す単位です。数値が大きいほど糸は太くなります。これは、9,000mあたりの糸の重さで表す恒長式こうちょうしきのためです。
  • テックス(tex): 国際的に統一された単位で、紡績糸とフィラメント糸の両方に使用され、数値が大きいほど糸は太くなります。1,000mあたりの糸の重さで表します。
    1,000mの糸の重さが1gである場合を「1テックス」となります。
    • デシテックス(dtex): 10,000mの糸の重さが1gである場合を「1デシテックス」となります。
  • オンス(oz): 主に生地の重さを表す単位ですが、糸の太さを間接的に示すこともあります。特にジーンズ生地などでよく見られます。数値が大きいほど生地が厚く(重く)なります。
    • オンス: 1平方ヤード(約0.836平方メートル)の生地の重さが1オンス(約28.35g)である場合を「1オンス」となります。

糸の種類

糸はその構成から大きく長繊維(フィラメント糸)と短繊維(紡績糸)に分けられます。

  • 単糸と双糸
    • 単糸たんし: 1本の繊維の束を撚って作られた、最も基本的な糸です。
    • 双糸そうし: 単糸を2本以上撚り合わせた糸です。単糸に比べて強度が高く、毛羽立ちが少ないのが特徴です。
  • 長繊維(フィラメント糸): 長い繊維をそのまま引き揃えた糸。
    • 合成繊維: ポリエステル、ナイロン、アクリルなど。
  • 短繊維(紡績糸): 短い繊維を撚り合わせて作った糸(綿、羊毛、麻など)。
    • コーマ糸: 綿花をコーミング加工という工程で、短い繊維や夾雑物を取り除いて作られた糸です。毛羽が少なく、均一で滑らかなのが特徴です。
    • カード糸: コーミング加工をしない糸で、繊維が不均一で毛羽が多いのが特徴です。
    • 梳毛糸そもうし: 羊毛を櫛で梳き、短い繊維を取り除いた、滑らかで光沢のある糸です。
    • 紡毛糸ぼうもうし: 短い繊維を多く含み、ふっくらとやわらかい糸です。
    • 麻: 亜麻あま糸、ラミー糸など。

ファンシーヤーン(装飾糸)

通常の糸に加工を施し、独特の表情を持たせた糸をファンシーヤーンと呼びます。

  • 杢糸もくいと: 異なる色の繊維を混ぜた霜降り状の糸。
  • トップ糸: 糸になる前の繊維の束(トップ)を染色してから紡績して作られた糸。
  • ネップ糸: 小さな繊維の塊(ネップ)を混ぜ込んだ凹凸のある糸。
  • ループ糸: 輪状に飛び出した装飾を持つ糸。
  • スラブ糸: 太さに意図的なムラを持たせた糸。

撚り糸(杢糸)

トップ糸

ネップ糸

ループ糸

スラブ糸

主な生地と柄の種類

生地名

  • ポプリン: 経密度が高く、横畝がある綿織物。
  • ブロード: 高級綿糸を使い、シルケット加工を施した平織物。
  • ガーゼ: 目の粗い平織の綿布。
  • ローン: 60番手以上の細い糸を使った、経緯密度が比較的似た平織物。
  • ボイル: 経糸、緯糸に強撚糸を用いた、粗く透けて見えるような薄地の織物。
  • シャンブレー: 経糸に色糸を、緯糸に白または経糸と別の色糸を用いた平織物。
  • オックスフォード: 経糸、緯糸ともに2本ずつ引き揃えて斜子織りで織った織物。
  • デニム(ダンガリー): 経糸はインディゴ染め(インディゴという青色の染料を用いて布や糸を染める技法)の糸を使い、緯糸は晒しまたは未晒しの糸で、1/2綾か、1/3綾で織ったもの。
  • ワッフル: 浮き糸を四角形に使い、マス型の凹凸を織り出したもの(蜂巣織の一種)。
  • サッカー: 縦にしぼみがある生地。糸の番手差や撚り差、組織差、織込差などでしぼを出します。
  • 楊柳ようりゅう: 不規則な経しぼみがある生地。クレープとも呼ばれます。
  • コーデュロイ: 毛足の長いパイルが縦畝につづくパイル組織の織物。毛足を均一な方向に毛羽立たせたものを別珍という。
  • ピケ: 経二重織の組織を用いて盛り上がった畝を表したもの。
  • コードレーン: 経糸に太い糸を用いた織物。

柄名

  • タータンチェック: 左右対称の格子柄。経緯とも同じ縞柄のもの。
  • マドラスチェック: 一方方向の縞柄。
  • ヘリンボーン: 山形斜紋織の一種で、杉の葉のような模様。
  • 千鳥格子ちどりごうし: 鳥が飛んでいるように見える柄。
  • グレンチェック: 数本からなる大格子柄。
  • オンブレチェック: 色の濃淡がグラデーションのように変化する縞柄。
  • ガンクラブチェック: 格子の間に多色の格子が入ったもの。
  • ドビーチェック: ドビー織機により織られた縞柄。
  • 刺し子チェック: 刺し糸を間隔的に加えて刺し子のように織った縞。

生地名と柄名で紹介いたしましたテキスタイルイメージのデータは、
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